ステンレス鋼の溶接施工

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どうも。ナカケンです。

普段はSM材を溶接しているのですが最近ステンレスの溶接をする機会が多い。

溶接 施工の解説の前に、ステンレス鋼の性質などについて一旦まとめようと思います。

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ステンレス鋼の定義

ステンレス鋼はCr含有率を10.5%以上、炭素含有率1.2%以下とし、耐食性を向上させた合金鋼である

とあります。

このCrが空気中の酸素と結合して、その表面に酸化膜(不動態皮膜)を作り、大気中の酸素などから守ってくれるわけです。結果錆びにくいというわけです。*1

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ステンレス鋼の種類

ステンレス鋼といっても実にたくさんの種類があります。

Cr、Niなどの、合金元素の含有量などによってオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、二相ステンレスなど様々な種類に分類されます。

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溶接構造用のステンレスとして馴染みがあるのがオーステナイト系のSUS304などではないでしょうか。

私が溶接するのもほぼSUS304です。

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ステンレス鋼の特徴

特徴としては、

  • 軟鋼と比較して線膨張係数が大きく熱伝導率が低い(溶接による歪が大きい)
  • 高温割れが起こりやすい
  • 溶接金属が垂れやすい
  • 軟鋼と比較すると材料費が高い
  • 溶接材料も高い

などが挙げられます。

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溶接施工時に気をつけること

施工上の注意としては

  • 過度な入熱を避け、大電流で溶接しない。
  • クレータ処理は適切に行う
  • 軟鋼以上に極力下向きで溶接する
  • ジグによる拘束など歪防止ははしっかり行う
  • パス間温度は150℃以下で施工する。

などが挙げられます。

また、材料費が高く失敗した時のリスクも大きいので軟鋼以上に気を使います。

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キズ掘りの様子

フルペネ部の、X検査で引っかかると最悪です。

補修により、局部的に溶接するためいい事がありません。

各工程でも気を使うため溶接工程で失敗するわけにはいきません。心して溶接しましょう。

また、溶接金属が垂れやすいため、下向き以外の姿勢での溶接が軟鋼と比較するとかなり難しくなります。

特に立向上進、上向では一気に難易度があがります。垂れやすいため、高確率で凸ビードになりやすいです。

一般的な308系ワイヤーではなく、全姿勢用のワイヤー(DW-308LP、SF-308LPなど)がオススメです。軟鋼ほど電気は上げれませんが、近い感覚で溶接が可能です。

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DW-308LPにて溶接

脚長6程度までのすみ肉溶接(下向き以外の姿勢)であれば、アークを切りながら溶接する人が多いですね。

半自動ではなく、TIGで溶接するのも一つの方法ではないでしょうか。

以上簡潔にまとめますと、

溶接時は大電流を避け、歪み防止をしっかり行い、慎重に溶接する。

以上!

溶接する前にステンレス鋼の性質、施工時の注意事項を理解し、溶接を行いましょう。

先日、二相ステンレスの溶接もあったので機会があればこちらも記事にしたいと思います。

ではでは。

➕ご安全に➕

*1:あくまで錆びにくいのであって、絶対錆びないわけではありません。もらい錆などは典型的なステンレスが錆びる一例です。

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